釣り業界に「御用メディア」は必要か

2016/01/21
総合 その他
広告主の顔色を伺う雑誌。読者もそれに気づき始めている。

最近、印象的だった雑誌記事について

以前に雑誌の編集をしていたこともあり、ソルトルアーの雑誌は各誌毎号チェックするようにしている。発売されたばかりの1月売りの雑誌を見てみると、『ルアーマガジン ソルト』3月号の「ヒラメ王」という企画、シマノの堀田光哉さんとダイワの高橋慶朗さんの対決が非常にリアルで面白かった。シマノ、ダイワという業界の最大勢力の対決の縮図のようなこの企画は、ふたりの有名アングラーの対決という裏で2大総合釣具メーカーの看板を背負ったメーカーの威信をかけた勝負であるという側面も見て取れ興味深かった。当然、読者もこのような真剣さが伝わる“生”の企画には興奮を覚えるし、ひいてはそれが購買意欲へと繋がる。私も同じようにこの企画を見て、買ってじっくり読んでみたいと思った。

 

雑誌業界の実情

ただ、中には広告主とベッタリという雑誌もある。あえて名前を出すことはしないが、クライアントを利する情報、ことさらにモノ(製品)の情報ばかりを伝え、さながら「御用メディア」と化してしまっている雑誌もある。雑誌は雑誌を売ることによる収益(読者からの収益)と広告掲載料(広告主からの収益)で成り立っている。そのため必然的に後者にも一定の配慮が求められることが多い。あるふたつの商品のうちどちらかのみしか掲載できないという場合、そのうちの一方がクライントの商品であればそちらが優先される可能性が高いし、出演者についてもクライアントに絡んだ者(テスターなど)が選ばれることが多い。詳細は伏せるが、雑誌業界では年間で広告をいくら支払うから◯本うちのメーカーの内容を扱う記事を作ってくれという約束が存在することも少なくない。

 

負の連鎖が雑誌をつまらなくする

もちろんこのこと自体は広告収入により成り立っている側面もある雑誌業界では当然のことでもあるし、雑誌という媒体の構造上、致し方ない部分もある。ただ、最近の釣り雑誌の一部は殊更にさきほどの後者、つまり広告主からの収益のほうを向きすぎて、本来の閲覧対象者である読者を軽んじるきらいがある。つまり、広告主に都合の良いことばかりを書き、都合の悪いことは(一切)書かない。こうなるのには雑誌自体が売れない時代になったという背景がある。雑誌が売れなくなる→広告収入に頼らざるを得なくなる→広告主への配慮の必要性が高まる→広告主の喜ぶ記事が増える。こういった流れだ。しかし、この「→」はここでは終わらない。広告主の喜ぶ記事が増える→読者の関心がさらに下がる→さらに雑誌が売れなくなる→さらに広告主に頼らざるを得なくなる→さらに広告主への配慮の必要性が高まる→さらに広告主の喜ぶ記事が増える→さらに雑誌が売れなくなる。負の連鎖に陥るのだ。こうして売り上げが下がった雑誌は広告主の「御用メディア」に成り下がらざるをえなくなる。

 

SMAPの騒動についてもいえる同様の作用

先日、SMAPというアイドルグループの解散“劇”が世間を賑わせた。このスクープをしたスポーツ新聞、報道に関わったテレビにも少し似たことを感じる。新聞社にしてみれば国民的アイドルグループの解散を1面で扱えれば売り上げが伸びる、ただ、当然悪く書くようであればそのような情報は出させてもらえない、そのため情報源である所属事務所にかなり配慮した形での記事となる。テレビ局についても、所属事務所のタレントを使えないと視聴率が下がり広告収入が入らなくなったり既存の番組が存続できなくなったりするから、所属事務所にかなり配慮した報道の仕方になる。このように見ると、本題の雑誌にせよ新聞にせよテレビにせよ、事務所と広告主という違いはあれ、標榜する表現の自由を自ら放棄して、読者や視聴者でない特定の団体に配慮を重ねている点では同じような構図になっているように感じる。実際のところを知りたいという方は一度各誌のどこかに掲載されているクライアント目次と記事の内容を比較してみると良いかもしれない。

 

メディアの役割

それでも、冒頭に書いた『ルアーマガジン ソルト』3月号の「ヒラメ王」などの良質な記事が多くあるのも事実で、個人的には同誌の村越正海さんの歯に衣着せぬ発言が人気の「正海に訊け!」なども毎号興味深く読んでいる。また、バス雑誌『Angling BASS』なども広告主とうまい距離感を保った良い記事が目立つように感じている。やはりメディアとは本来的にそれを読む、見る、聴く人などに向けて情報を発信するものであり、それらの人を首位的に考えなければ存在価値はほぼなくなる。SNSやブログなどで個人が自由に情報を発信できる時代。メディアは何も特別な存在ではなく、情報の質(正確さや速さなど)と量だけが一般人より高いことが求められる存在に他ならない。もちろんこれはFISHING STATION!についても同じことが言える。良いものは良いと、悪いものは悪いと言えてこそメディアなのである。自戒の意味を込めて。

文=F!編集部